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Noism1 「Liebestod-愛の死」(金森穣)「Painted Desert(山田勇気)

June 4, 2017

ノイズム1のレパートリーと新作を観て来ました。

 

Painted Desert は山田勇気がノイズム2に振付けたものを、ノイズムとして初演したもの。デザインの異なる白の衣装を着た男女が夢の中で描き出す、複雑な人間模様。対になったり離れたり。夢の中なので、つじつまが合わなくて変幻自在でも大丈夫。歓喜も苦痛も全てが詰まった見応えある50分でした。

 

15分の休憩を挟んで、いよいよお目当て、金森穣の新作です。

掲示板の上演時間20分、というのを見て、内心「やった!」と思ってしまいました。(金森ファンの方、ごめんなさい)実は近年のカルメンやラ・バヤデールを観ていて、「自分は金森さんの作品は短い小品の方が好きかもしれない」と感じていたのです。

 

期待通り、本当に素晴らしい舞台でした。

ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の音楽を使用した作品でしたが、ストーリーとは全く関係がなく(登場人物は二人だけ)、純粋に金森さんが18才の頃に聴いて感動したこの音楽からのインスピレーションだけを頼りに創り上げた作品でした。

 

死に行く男性(末期の男:吉崎裕哉)は、女性の愛を受け入れながらも、その目は常に死を見つめ、最期の歓喜も悲痛な叫びに聞こえます。そして女性(歓喜の女:井関佐和子)は、死をも愛の中に取り込んでしまう勢いで、全身から愛の喜びを放射させながら踊ります。

 

金箔を思わせる、大きな背景幕。

それは生と死を隔てる境界線。

向こうの世界へ行ってしまった男を求め、女がその幕を叩く度に、波紋が広がり、心のひだのように感情のバイブレーションが客席に広がってきます。アフタートークで知った事ですが、この時、幕の後ろでは男がしっかりと女の殴打を受け取っていたそうです。恐らくそうでなくては、幕が揺れすぎてしまい、振付家の欲しい波が立たなかったという物理的な理由もあったのでしょうが、それ以上に、あゝ、なんてロマンチックなんでしょうと感激してしまいました。

 

男を失って嘆き悲しむ女の姿が続くのかと思いきや、女の表情はやがて再び喜びを称え、最後に幕が一気に床に落ちると、彼女もまたその中に消えていきます。そして、二つの山が立ち上がり、ひとつになって、また床に沈んでいく。あゝ、この辺り、想像力が震えます。

 

ゆっくりと沈んで行く時、感動しながらも、「このまま幕が平になってしまうかな。いやいやそれじゃあ引田天功だ」と思ってしまったのは、まだまだ至らない自分です。

 

真ん中にひとつの小さな金の塚を残して舞台は幕となります。(「塚」という言い方はアフタートークで登場した俳優、八幡智人さんの弁。とてもしっくりきたので、使わせていただきました。)

 

この歓喜の女の最期を見て私の脳裏をかすめたのは、ケネス・マクミラン「マイヤリンク」のマリー・フォン・ヴェッツェラ。彼女は皇太子ルドルフとの「死をもって完成する愛」に憧れ、ルドルフに殺される時も喜びの表情を見せますが、この歓喜の女には、「死を包み込む大きな愛」を感じました。生から死へ昇華する愛と、死をも昇華させる愛とでもいうのでしょうか。

 

ワーグナー「Liebestod-愛の死」。有名過ぎる音楽を舞踊で表現することに恐怖はなかったのかと思いましたが、ご本人曰く、「様々な経験を積んだ今だからこそ、創作できた作品。自分のすべてをさらけ出しているので、それは恥ずかしい。金森終わったな、結局ロマン主義じゃないか、と言われるかもしれない。でもこれが私ですから、全信頼を失ってもつくります」と言うほどに、全身全霊をかけて作った作品でした。そして、客席はそれを全身全霊で受け止めた夕べでした。

 

(2017年6月3日:さいたま芸術劇場)

 

 

 

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